1. 学生数

 中国の大学生数は、政府主導で大学整備が進められた1998 年を境に、顕著な増加傾向を示している。大学の毎年の入学生規模は1987 年から1997 年までの10 年間に、約62万人から約100万人へ年平均6.2%の割合で着実に増加してきたが、1999 年から増加率が高まり、1998 年の約108万人が2008年に約608万人へと約5.6 倍に急拡大した。

 その後も中国では学生数の大幅拡大が続いており、直近の2020年での学部在学生は約3,285万人、大学院在学生は約314万人で、合計約3,599万人に達し、2008年の約5.9倍となっている。日本の学部在学生は2022年で約263万人、大学院在学生は約26万人で、合計約289万人であり、現時点で中国は日本の約12.5倍の在学生規模を有している。

2. 進学率

 UNESCOの統計によれば、中国の大学進学率は2020年で58.42%である。これは、日本の64.10%とほぼ同等である。中国や日本と比較して大学進学率が高いのは、韓国の98.54%、米国の87.89%、ドイツの73.52%などである。高等教育の普及に関する国際的な基準では、一般に大学進学率が15%以下の場合は「エリート教育段階」、15%から50%では「大衆化教育段階」、50%を超えると「普及段階」とされる。中国の高等教育は、「大衆化教育」から「普及段階」に移行したとされる。

3. 入試制度(高考)

 中国では、「全国大学入試統一テスト」(「普通高等学校招生全国統一考試(略称:高考)」が毎年6月に実施される。同テストは、国務院教育部入試センターと各省市の入試委員会が共同で管理運営している。

 試験科目は省市によって若干異なるが、基本的に国語、数学、外国語の3 科目が必須科目で、文科総合あるいは理科総合のいずれかを選択する。文科総合は、政治、歴史、地理の3 科目、理科総合は物理、化学、生物の3科目の内容が総合的に出題される。

 従来中国の大学では、日本のように各大学が実施する2次試験は行われず、受験生は自己採点した結果を基に志望校を決めて願書を提出し、約1か月後に統一テストの結果により各大学から合否判定が通知されていた。しかし2003年、教育部が改革に乗り出し、北京大学や清華大学等の22の大学で、独自の筆記試験および面接試験による一次試験の合格者を決定し、その後一次試験合格者に通常の全国大学入試統一テストを受験させ、各大学の定める水準をクリアした学生に入学許可を与える方式を認めた。ただし、この大学独自の一次試験による合格者数は、入学生全体の5%以内とする条件が付けられた。この制度は年々実施校が増加し、2018年には90校で実施された。

 一方全国大学入試統一テスト自体も、北京、上海等をはじめとする20の省、市、自治区では、地域ごとに自主的に作成した試験問題を出題しており、全国で同じ内容の試験を一斉に実施する全国大学入試統一テストから、各省や大学の自主的な入試方式を容認し、各大学の個性を尊重する方向が模索されている。

4. 学年制度

 中国の大学では、一般に前期・後期の2学期制を採用しており、8月に新学期が開始される。6月に後期試験を終えて休みに入り卒業時期は7月末である。学部教育は4年制(医学部等専攻では5年制)で、学業成績が極めて優秀な学生には飛び級を認めている。

5. 学位

 中国では、学位を「学士」、「修士」、「博士」の3 種類に区分し、国務院に設置された「学位委員会」が全国の大学等による学位授与を管理している。「学位委員会」は、一定の条件を備えた大学や科学研究機関に対して学位授与権限を付与している。学位授与機関として認められた大学等は、「学位評定委員会」を設置するとともに、学位論文を審査する「学位論文答弁委員会」を組織して審査を行う。修士や博士を養成する機関として、中国科学院 、中国社会科学院などの研究所も認定されていることは、すでに述べたとおりである。

6. 学費

 1949年の新中国成立以来、大学を中心とした高等教育は全額公費負担により運営が行われ、学生は学費が免除となるだけでなく、政府から生活費の一部に充当する目的で「助学金」が支給され、医療費の免除等の特典が与えられていた。

 1980年代に入り経済社会の発展に伴い、従来の大学運営では人材のニーズに対応できなくなり、また高等教育の規模が拡大し学生数が着実に増加したことにより、大学の教育経費を国家財政によって全面的に支えることが徐々に困難となった。そこで政府は1985年に、国家が各大学に割り当てる公費学生の新入生募集枠以外に、各大学が自主的に一定数の自費学生の募集を行うことを認める方針を打ち出した。これを受けて一部の大学では、入試の合格ラインに達しなかった学生の入学を許可する代わりに、学費の一部を徴収する制度の試行を開始し、中国の大学では公費学生と自費学生が併存する形となった。

 当初自費学生の募集枠は公費学生の5%以下とされていたが、入学者数の増加とともに1992年には30%に達した。その一方で、自費学生の入学許可条件として合格ラインに対して20点の不足までとされていた基準が次第に遵守されなくなり、大学によっては合格ラインに100点以上も足りない学生を自費学生として入学させる等、大学の教育水準に影響を与える問題も発生するようになった。このため1998年からは公費学生の制度を廃止し、師範大学および農林業や鉱業等の一部の職業大学を除くすべての大学で、新入生に対して学費が原則として徴収されるようになった。

 学費徴収に関し、現在では日本と中国で制度的に変わらないように見えるが、科学技術に関係する学生では大きく違っている。中国では、有力大学の工学関係や理学関係の学生は、大学院生を中心に学費が免除され、さらには生活費の支給も行われている場合が多い。これは、研究室が政府や民間企業から研究費を獲得し、研究室に所属して研究や実験を手伝う大学院生や一部学部学生に対して、獲得した研究費から学費や生活費として支弁するのである。