中国では、組織の責任者は「領導」と呼ばれる。複数名で意思決定がなされる場合には「領導集体」と呼ばれ、日本の理事会、取締役会などに当たる。2022年4月現在の中国科学院の指導部である領導集体は、侯建国現院長をトップとして、副院長(複数)、秘書長、副秘書長(複数)など、合計11名で構成されている。
侯建国院長

侯建国は1959年に福建省に生まれ、文化大革命が終了し鄧小平の大号令により大学入試(高考)が復活した直後の1978年に、中国科学技術大学に入学した。大学では物理学を専攻し、特に固体物理を専門として博士課程まで進んだ。1989年に同大学より博士号を取得の後、1989年に中国科学院福建物質構造研究所でポスドク研究者となり、1991年には米国に渡ってカリフォルニア大学バークレー校でポスドク研究者、1993年にはオレゴン州立大学高級訪問学者となった。1995年に帰国し、母校である中国科学技術大学に勤務した。2000年には同大学の副学長となり、2008年から2015年まで校長(学長)を務めた。2015年から2016年までは同じ国務院の機関で科学技術政策を担当している科学技術部の副部長を務めた。その後、江西チワン族自治区の中国共産党支部副書記などを務め、2018年から中国科学院のナンバー2である副院長(国務院の部長級)に就任し、2020年に同院の院長に就任した。
中国の大学や研究機関には、一般的に中国共産党の支部が設置され、そのヘッドである書記が大きな権限を有する場合が多い。特に大学では、アカデミックな業務の責任者は学長(校長)であるが、管理的な業務は党書記が担当する。中国科学院にも中国共産党支部があるが、その書記は侯院長が兼務している。
陰和俊副院長

ナンバー2の副院長で中国科学院党委副書記(国務院の部長級)は、陰和俊(阴和俊)である。
1963年1月に山西省に生まれ、1979年に太原工業学院(現在の太原理工大学)に入学した。1983年に卒業して同校の教師となった。1992年に中国科学院電子工学研究所に入り、電磁界およびマイクロ波技術を研究し、1995年に博士号を取得した。博士号取得後も紳士工学研究所に勤務し、1999年には電子工学研究所の副所長となった。2006年には中国科学院の本部に移り、ハイテク研究担当の局長を経て、2008年からは中国科学院の副院長に昇格した。その後、国務院科学技術部副部長や、北京市の副市長、天津市党委副書記などを経て、2020年に中国科学院のナンバー2である、副院長に就任している。
その他の幹部
序列第三位は張亜平(张亚平)副院長である。1965年雲南省生まれで、昆明理工大学や復旦大学を卒業後、中国科学院昆明動物研究所所長などを務めた動物学者である。
序列第四位は張涛(张涛)副院長である。1963年陝西省生まれで、中国科学院大連化学物理研究所で博士号を取得し、英国バーミンガム大学の研究院などを経て、2007年から大連化学物理研究所所長を務めた。2016年に現在の中国科学院副院長となった。
序列第五位は、中央規律検査委員会駐中国科学院規律検査監察組(中央纪委国家监委驻中国科学院纪检监察组)のヘッドである孫也剛(孙也刚)である。1963年江西省生まれで、北京大学を卒業後、主として教育畑を歩み、2017年からこの職にある。
序列第六位は半導体研究所長を務めた李树深副院長、第七位は物理研究所副所長を務めた高鸿钧副副院長、第八位は動物研究所長と北京分院院長を兼務する周琪副院長、第九位は汪克強秘書長、第十位は李和風副秘書長、第十一位は厳慶副秘書長である。
以上の11名が、中国科学院の現在の指導部を形成している。