中国国内には、中国工程院、中国社会科学院など、中国科学院に関連する機関が幾つか存在する。

中国工程院

 中国国内での中国科学院の関連組織として、まず挙げなければならないのが中国工程院である。

 1991年、中国科学院の学部の一つである技術科学部が、国際的な組織である国際工学アカデミー連合(CAETS)のメンバーとなるべく申請を行ったが、技術科学部が中国科学院の一部であるとの理由で申請が認められなかった。 このため翌1992年に、技術科学部に属する王大珩ら6名の学部委員が早期に中国工程・技術科学院を設置すべきという意見書をまとめ、政府に提出した。

 この意見書を受けて政府部内で検討が進められ、1994年2月に中国工程院が新設された。中国工程院は中国科学院と同様に院士制度を導入し、同年6月、第7回中国科学院院士大会開催と同時期に中国工程院院士大会を北京で開催した。以降中国科学院と中国工程院は、院士大会を隔年毎に合同で開催している。

 2021年11月現在中国工程院は、院士大会、主席団、9つの学部、7つの専門委員会、及び事務局で構成されている。中国工程院は中国科学院と違い、傘下に研究所を有していない。学部は機械・運搬工学、情報・電子工学、化学工業・冶金・材料工学、エネルギー・鉱山学、土木・水利・建築工学、環境・繊維工学、農学、医薬・衛生工学、工程管理学の9つであり、専門委員会は院士選出政策委員会、科学倫理委員会、諮問委員会、科学技術協力委員会、学術・出版委員会、教育委員会、産業科学技術委員会の7つである。

 2021年11月現在で、中国工程院院士数は971名である。また中国工程院も、中国科学院同様に外国籍院士を有しており、全体で111名であり、日本からは藤嶋昭東京理科大学前学長、大村智北里大学特別栄誉教授(ノーベル生理学・医学賞受賞者)、小泉英明日立製作所名誉フェロー、田村幸雄東京工芸大学名誉教授、天野浩名古屋大学教授(ノーベル化学賞受賞者)の5名が選出されている。

中国社会科学院

 中国社会科学院は、文化大革命終了直後の1977年5月、中国科学院の哲学社会科学部及びその傘下の研究所が分離独立して設置されたものである。

 独立した当時は14の研究单位で約2,200名であったものが、現在は31研究所、45研究センターであり、約4,200名を擁している。

 中国社会科学院は、高い研究成果を有する科学者を顕彰し、政府に対する助言を求める組織として、文学・哲学、社会・政治・法学、歴史学、経済学、国際問題研究、マルクス主義研究の6つの学部を有している。中国科学院と中国工程院は学部委員を院士と改称したが、中国社会科学院は学部委員の呼称を継続して使用しており、通常の学部委員と80歳以上の栄誉学部委員をおいている。中国社会科学院にも院士制度を導入すべきとの主張もあるが、現在は検討中となっている。

中国農業科学院、中国医学科学院など

 以上のほか、中国国内には、中国農業科学院、中国医学科学院、軍事科学院、中国環境科学院などの組織がある。これらは、農業、医学、国防、環境等の分野の研究所を傘下に有している組織であるが、中国科学院など著名な学者や功績のあった学者を顕彰したり、政府などに助言したりする機能はない。