ロシア

 中国科学院の発足時にお手本としたのが、基礎科学の担い手としてロシア帝国やソ連時代から多くの研究成果を挙げてきたロシア科学アカデミー(Russian Academy of Sciences、RAS)である。西欧の科学技術を積極的に導入していくため、1724 年にピョートルⅠ世により設立されたサンクトペテルブルク帝国科学芸術アカデミーが、このロシア科学アカデミーの前身である。また同年に、アカデミー附属の教育機関としてアカデミー大学が設立されるが、これが現在のサンクトペテルブルク国立大学の前身である。

 ロシア科学アカデミーは中国科学院と同様に、研究機能と研究者の顕彰機能を有している。教育機能についても、傘下に大学は有していないが研究所の博士号の授与権を有している。顕彰機能としてロシア科学アカデミーは、アカデミー正会員(アカデミシャン)、準会員(コーレスポンディング)の制度を有している。対象は傘下の研究所所属の研究員のみならず、ロシアの全研究者であり、顕著な科学的功績に対して与えられる極めて高い地位の称号となっている。両会員とも終身会員であり、新たな正会員は現会員による投票で選ばれる。現在、アカデミー正会員約900名、準会員約1,150名、外国人会員約500名である。

日本

 日本では、日本学士院、日本学術会議、日本工学アカデミーの三つの機関が、科学アカデミー関連とされているが、このうちで中国科学院の学部に最も近い機関は日本学士院である。

 日本学士院は、学術上功績顕著な科学者を優遇し学術の発達に寄与する事業を行うために、法律に基づいて設置された文部科学省の特別の機関であり、1879年に東京学士会院として発足し、帝国学士院を経て、戦後の1947年に日本学士院となった。1949年に日本学術会議の下部組織に位置づけられたが、その後1956年に独立して、現在に至っている。

 会員は終身であり、定員は150名である。死亡により欠員が生じた分科ごとに各部分科会員の投票により毎年12月に新会員が選定される。

 日本学士院は2部構成となっており、第1部は文学・史学・哲学、法律学・政治学、経済学・商学の人文科学部門、第2部は、理学、工学、農学、医学・薬学・歯学の自然科学部門となっている。

 日本学士院の会員は日本人の科学者・研究者であるが、これとは別に我が国における学術の発達に特別に功労のあった外国人研究者を客員として選定しており、台湾出身のノーベル化学賞受賞者である李遠哲、中国大陸出身で米国籍のノーベル物理学賞受賞者である楊振寧が名を連ねている。

 日本学士院が中国科学院の学部と違う点は、恩賜賞や日本学士院賞、エジンバラ公賞、日本学士院学術奨励賞といった科学賞の授賞も行っている点である。ちなみに、エリザベス英国女王の夫君であった故エジンバラ公は、日本学士院の名誉会員であった。