- 1. 1. 国務院の科学技術政策関連機関(全体像)
- 2. 2. 国家発展・改革委員会
- 3. 3. 科学技術部
- 4. 4. 教育部
- 5. 5. 工業・情報化部
- 6. 6. 国家衛生健康委員会
- 7. 7. 農業農村部
- 8. 8. 自然資源部
- 9. 9. 生態環境部
- 10. 10. 交通運輸部
- 11. 11. 応急管理部
- 12. 12. その他の国務院部・委員会
- 13. 13. 中国科学院
- 14. 14. 中国社会科学院
- 15. 15. 中国工程院
- 16. 16. 中国気象局
- 17. 17. 国家市場監督管理総局
- 18. 18. 国家エネルギー局
- 19. 19. 国家国防科技工業局
- 20. 20. 国家林業・草原局
- 21. 21. 国家中医薬管理局
- 22. 22. 国家薬品監督管理局
- 23. 23. 国家知識産権局
1. 国務院の科学技術政策関連機関(全体像)
国務院は、中国の国家行政機関であり、諸外国の政府・内閣に相当する。
中国では、中国共産党が国家を領導するとの憲法の規定があることや、主要幹部の実質的な人事権が中国共産党にあることなどのため、日本や米国など西側諸国の政府・内閣と大きく異なり、中国共産党が主体となって決定された政策を具体的に実施する執行機関的な色彩が強い。
とは言え、国務院の各部局は行政の最前面にいるため政策立案のための知見や経験を多く有しており、科学技術を含めた個々の政策立案に際して中国共産党と情報提供などで協力し、必要に応じて共同で政策立案に当たっている。
国務院の構成は次図の通りである。

国務院総理は、国務院のトップとして国務院の活動を指導し、行政全般を指揮・監督する。歴史的に、新中国建国直後に周恩来が総理に就任した政務院が国務院の前身であり、周恩来は1954年に政務院から国務院に改組された以降も1976年に死去するまで20年以上にわたり総理の任にあった。国務院総理は中国共産党中央政治局常務委員から選出されており、2021年現在の総理は党内序列第2位の李克強である。
国務院総理を補佐するために、2021年現在、副総理4名、国務委員5名が置かれている。国務院全般の事務を処理する機関として弁公庁があり、その責任者として秘書長1名が置かれている。秘書長は副総理または国務委員が兼任することになっており、2021年現在は国務委員の1人である肖捷(しょうしょう)がその任にある。
国務院の機関として、各国の省庁に相応する組成部門(26部門)のほか、直属特設機構(1機構)、直属機構(10機構)、弁事機構(2機構)、直属事業単位(9機構)、部・委員会が管理する国家局(16機構)がある。
国務院の機関で、科学技術政策上重要な機関を抜き出して示したのが次図である。

上記の図で組成部門に属している機関は、国家発展改革委員会、科学技術部、教育部、工業・情報化部、国家衛生健康委員会、農業農村部、自然資源部、生態環境部、交通運輸部、応急管理部、外交部、財政部である。詳細は下部を参照されたい。
直属事業単位に属している機関は、中国科学院、中国社会科学院、中国工程院、中国気象局である。 また直属機構に属している機関は、国家市場監督管理総局である。詳細は下部を参照されたい。
部・委員会が管理する国家局 (国務院に直属するが他の部・委員会が管理する組織)は、国家エネルギー局、国家国防科技工業局、国家林業草原局、国家中医薬管理局、国家薬品管理監督局、国家知識産権局である。 詳細は下部を参照されたい。
(参考資料)
・中央人民政府HP http://www.gov.cn/guowuyuan/index.htm
2. 国家発展・改革委員会
1949年の建国以来、中国の経済社会活動は中国共産党と国務院が立案し決定する五か年計画などに従っている。この五か年計画を国務院側で主管しているのが国家発展・改革委員会(国家发展和改革委员会、National Development and Reform Commission)であり、「発改委」と略称される。同委員会の前身は1952年に発足した国家計画委員会であり、1998年に国家発展計画委員会、さらに2003年に国家発展・改革委員会と改称した。
国家発展・改革委員会は、五か年計画の企画・立案などによる経済のマクロ調整、経済構造・体制改革の指導、経済と社会の政策の研究などを行っている。科学技術については、国民経済・社会の発展と科学技術・教育の調和の観点から政策の企画・立案に関与している。また、マクロ経済の観点からの産業育成政策にも携わっている。
なお、国務院に直属しているが国家発展・改革委員会が管理する国家局として、エネルギー政策を所管している「国家エネルギー局」がある。
(参考資料)
・国家発展・改革委員会HP https://www.ndrc.gov.cn/
3. 科学技術部
国務院において科学技術全般を担当しているのが、科学技術部(科学技术部、Ministry of Science and Technology)である。
新中国建国以来、優れた科学者を多数擁する中国科学院が科学技術の基本的な方向を示してきたが、1954年の国務院改革により中国科学院は政策担当機関ではなく研究実施機関と位置づけられた。1956年3月に国務院は科学技術政策の担当機関の不在を埋めるため、陳毅副首相を主任とする科学計画委員会(科学规划委員会)と国家技術委員会を設置し、前者に科学技術分野で最初の中長期計画である「科学技術発展遠景計画綱要(1956年~1967年)」の策定を担当させた。1958年に国務院は、科学計画委員会と国家技術委員会を統合して国家科学技術委員会を設置し、聂荣臻(じょうえいしん)副首相を主任に兼務させた。これが現在の科学技術部の前身である。
文化大革命勃発後、国家科学技術委員会の業務はほとんど停止し、1970年には中国科学院に吸収された。文革後の1977年9月に、中国科学院から国家科学技術委員会が再び分離され、方毅副首相兼中国科学院副院長(後に院長に昇格)が主任を兼務した。同委員会は1998年に、現在の科学技術部に名称が変更された。
科学技術部の最大の使命は、中国全体の科学技術振興を計画的に実施するための方向性を策定することである。このため、中国共産党や国の社会経済全般の計画立案に当たる国家発展・改革委員会と連携を取りつつ、科学技術やイノベーションのための五か年計画や長期的な計画の企画立案に当たっている。2021年には、第14次五か年計画が公表された。
科学技術部のもう一つの重要な使命は、五か年計画などで設定された政策に基づき科学技術関連のプロジェクトの資金の配分を行うことである。文化大革命が終了した後、鄧小平最高指導者の決断により、科学技術も一律的な資金配分から意欲のある優秀な研究者に傾斜配分することとし、そのための様々な競争的な資金プロジェクトがスタートしたが、科学技術部はこの中で比較的大規模で応用研究・開発的なプロジェクトの資金配分を自ら行ってきた。一方、米国のNSFに倣い大学や国立研究機関などが行う基礎研究を中心に助成する機関として、1986年に国務院の直属事業単位である「国家自然科学基金委員会(NSFC)」が設置されたが、2018年に国務院の機構改革の一環としてNSFCは科学技術部の外局となった。このため現在は、科学技術部は研究開発資金配分の中心的な機関となっている。
科学技術部は、このように政策の企画・立案と研究資金配分が中心であり、傘下にシンクタンク的な機関を除いて研究開発を実施する部門や大学などは有していない。
(参考資料)
・科学技術部HP http://www.most.gov.cn/
・国家自然科学基金委員会HP http://www.nsfc.gov.cn/
4. 教育部
中国で教育政策を担当しているのは教育部である。教育部は、基礎教育から高等教育まで、さらには職業教育、民族教育などを所管しており、日本の旧文部省に相当する。
中国でも、基礎研究の実施や研究者の育成は大学が主体であるため、科学技術の関係では大学などの高等教育関連の政策が重要である。大学全体の3分の2が国公立である(2018年で国公立826校、私立419校。参考として日本の大学数は2020年で国公立173校、私立592校)。中国の有力大学は教育部所管が多いが、日本と違い教育部以外の部や委員会なども大学を所管している。
中国では、教育部が中心となって、資金と人材の優先配分を行って世界に通用する大学を育成しようとする政策が実施されてきた。「211工程」、「985工程」などはその代表的な政策であり、これらにより北京大学や清華大学は世界のトップクラスの大学になっている。
(参考資料)
・教育部HP http://www.moe.gov.cn/
5. 工業・情報化部
工業・情報化部(工业和信息化部、Ministry of Industry and Information Technology)は比較的新しい機関であり、2008年の国務院機構改革の一貫で、下記の部署などを統合して設立された。
- 国家発展・改革委員会の産業政策部門
- 国防科学技術工業委員会の業務
- 情報産業部(信息产业部)の郵政事業などを除く情報通信職務
ただしその際、廃止となった国防科学技術工業委員会の業務については、政策部門などの一部が工業・情報化部に統合されたが、実施部門を含めてほとんどは新たに設置された国家国防科技工業局に移転し、同局は工業・情報化部が管理する国務院の独立した国家局になっている。
工業・情報化部は、このように日本の経済産業省の産業政策部門、旧郵政省の情報通信部門に相当し、産業政策全般、ハイテク産業育成政策、情報通信政策などを担当している。
工業・情報化部は、内部組織として国家航天局と国家原子能機構を有するが、実体的にこれらの組織は国家国防科技工業局の傘下と想定される。工業・情報化部は、北京航空航天大学、北京理工大学、ハルビン工業大学など全国に9校の大学を所管している。
(参考資料)
・工業・情報化部HP https://www.miit.gov.cn/
6. 国家衛生健康委員会
国家衛生健康委員会(国家卫生健康委员会、National Health Commission)は、国民の健康、医療、疾病対策などを所管しており、日本の旧厚生省に当たる。国家衛生健康委員会は、かつて衛生部と呼ばれていたが、2013年に国家健康・家族計画委員会となり、さらに2018年に現在の名称となった。
科学技術関係では、ライフサイエンス全般を担当しているが、中国伝統の医療・薬品は国家衛生健康委員会が管理する国務院の独立した国家局である国家中医薬管理局が担当し、薬品の安全規制は国家市場監督管理総局が管理する国務院の独立した国家局である国家薬品監督管理局が担当している。
国家衛生健康委員会は、直轄組織として中国医学科学院・北京協和医学院、北京協和医院、中国疾病予防制御センターなどを有している。
(参考資料)
・国家衛生健康委員会HP http://www.nhc.gov.cn/
7. 農業農村部
農業農村部(农业农村部、Ministry of Agriculture and Rural Affairs)は、農業、畜産、漁業などに関する業務を所管している。日本の農林水産省に概ね相当するが、林業については 部・委員会が管理する国家局で自然資源部が管理する国家林業・草原局が担当している。
科学技術に関しては、農業、水産に係わる政策を所管しており、また傘下に中国農業科学院、中国水産科学研究院、中国熱帯農業科学院などの研究実施機関を擁している。
(参考資料)
・農業農村部HP http://www.moa.gov.cn/
8. 自然資源部
自然資源部(自然资源部、Ministry of Natural Resources)は、土地利用や資源政策を担当する機関である。自然資源部は比較的新しい機関であり、2018年の国務院機構改革の一貫で、国土資源部、国家海洋局、国家測地地理情報局などが合併して設立された。中国の土地、鉱物、森林、草原、湿地、水、海洋に係わる利用政策を担当している。
科学技術関係では、天然資源、海洋開発、地理情報、地質調査などの業務を所管している。さらに 部・委員会が管理する国家局で ある国家林業・草原局を管理する立場から林業行政も担当している。
(参考資料)
・中央人民政府HP http://www.gov.cn/fuwu/bm/zrzyb/index.htm
9. 生態環境部
生態環境部(生态环境部、Ministry of Ecology and Environment)は、環境保全を担当する役所である。国際的な環境保護の高まりを受けて、1973年に国務院に環境保護領導小組が設置され、1988年には国務院の独立局として国家環境保護局が設置された。2008年には国務院の組成部局に格上げされ、環境保護部が設置された。2018年には生態環境部と名称が変更され、現在に至っている。
科学技術に関して、生態環境部は環境保護全般と原子力安全を担当し、傘下に中国環境科学研究院を有している。原子力安全業務に関しては、従来独立した国務院の部局である「国家核安全局」が担当していたが、2018年の機構改革に伴い同局は生態環境部の内部組織となった。
(参考資料)
・生態環境部HP http://www.mee.gov.cn/
・国家核安全局HP https://nnsa.mee.gov.cn/
10. 交通運輸部
交通運輸部(交通运输部、Ministry of Transport)は、道路、水路など交通を管轄する部局であり、日本の旧運輸省に当たる。交通運輸に係わる科学技術も担当し、傘下に交通運輸部科学研究院を有している。
11. 応急管理部
応急管理部(应急管理部)は、災害などの危機管理を担当する部局である。科学技術関係では地震対策や防災に関する技術開発などを担当している。傘下に国家地震局を有している。
(参考資料)
・応急管理部HP https://www.mem.gov.cn/
12. その他の国務院部・委員会
科学技術は様々な経済活動や社会活動に関連しており、中国国務院のほとんどの部局は、何らかの形で科学技術に関与している。その中で、横断的な観点から重要な部局として、外交を統括する外交部と国家予算を管理する財政部がある。
- 外交部
外交部は、国務院の26ある組成部門(日本の省庁に相当)の筆頭であり、日本の外務省に相当する外交を担当する部局である。外交部は対外関係全般を取り扱っており、科学技術に関しても国際交流、留学生の派遣・受け入れなどに関与しているほか、習近平政権となってからは一帯一路政策をサポートする立場から関連地域諸国との技術交流の促進に寄与している。 - 財政部
財政部は、中国の国家財政を担当しており、日本の財務省に当たる。1949年の新中国建国以来存在している組織であり、科学技術予算の編成を通じて科学技術に関与している。
(参考資料)
・外交部HP https://www.fmprc.gov.cn/web/
・財政部HP http://www.mof.gov.cn/index.htm
13. 中国科学院
中国科学院は国務院に直属している機関で、中国最大の研究開発実施機関である。また、科学関連で重要な業績を挙げた中国の科学者は、中国の最も優秀な科学者、学術権威とされる中国科学院の院士に選任される。さらに、中国科学院は優れた大学を傘下に有している。
中国科学院は1949年の新中国建国と同時に設置された機関であり、当初は多数の科学者を擁して中国の科学技術政策を企画し、その重要な部分を自らが実施していた。しかし、その後現在の科学技術部の前身である国家科学技術委員会などが設置されたため、中国科学院は研究開発の実施機関として位置づけられることになった。
ただ、その後も中国科学院は、結果として中国の科学技術政策に大きな影響を及ぼし続けている。一つは、多くの科学者・技術者を擁しているため、中国科学院が実施する施策が他の研究機関の模範となる場合があることであり、1990年代に実施された海外人材の招聘政策である「百人計画」がその代表例である。百人計画は中国科学院の内部的な施策として打ち出されたが、この施策が成功したことにより政府が 海外人材の招聘政策をより拡充していった。
二つ目は、院士制度を通じた科学技術政策の提案である。院士は、科学技術の世界で功なり名を遂げた人々であり、これらの人々が中国の科学技術政策について大所高所から意見を表明し、それが中国政府の政策に反映することがある。代表的な例としては、1986年3月に4名の中国科学院学部委員(現在の院士)によってなされたハイテク技術開発への提言であり、この提言を受けて鄧小平の指示により、「国家ハイテク研究発展計画(863計画)」がスタートしている。
このように、現在でも中国科学院は、科学技術政策立案の面で大きな役割を果たしている。
なおより詳細な情報が必要の方は、この理事長の部屋にある中国科学院のコーナーも参照されたい。
(参考資料)
・中国科学院HP https://www.cas.cn/
14. 中国社会科学院
中国社会科学院は、文化大革命終了直後の1977年5月、中国科学院の哲学社会科学部及びその傘下の研究所が分離独立して設置されたものである。独立した当時は14の研究单位で約2,200名であったものが、現在は31研究所、45研究センターであり、約4,200名を擁している。
中国社会科学院は、文学・哲学、社会・政治・法学、歴史学、経済学、国際問題研究、マルクス主義研究の6つの学部を有している。中国科学院と中国工程院は学部委員を院士と改称したが、中国社会科学院は学部委員の呼称を継続して使用しており、通常の学部委員と80歳以上の栄誉学部委員をおいている。中国社会科学院にも院士制度を導入すべきとの主張もあるが、現在は検討中となっている。
(参考資料)
・中国社会科学院HP http://www.cass.net.cn/
15. 中国工程院
1991年、中国科学院の学部の一つである技術科学部が、国際的な組織である国際工学アカデミー連合(CAETS)のメンバーとなるべく申請を行ったが、技術科学部が中国科学院の一部であるとの理由で申請が認められなかった。このため翌1992年に、技術科学部に属する王大珩(おうだいこう)ら6名の学部委員が早期に中国工程・技術科学院を設置すべきという意見書をまとめ、政府に提出した。この意見書を受けて政府部内で検討が進められ、1994年2月に中国工程院が中国科学院から分離されたうえで、中国科学院と同様に院士制度を導入して設置された。
2021年4月現在、中国工程院は、院士大会、主席団、9つの学部、6つの専門委員会、及び事務局で構成されている。中国工程院は中国科学院と違い、傘下に研究所を有していない。院士大会は2年に一度、中国科学院の院士大会と合同で開催される。学部は機械・運搬工学、情報・電子工学、化学工業・冶金・材料工学、エネルギー・鉱山学、土木・水利・建築工学、環境・繊維工学、農学、医薬・衛生工学、工程管理学の9つであり、専門委員会は院士選出政策委員会、科学倫理委員会、諮問委員会、科学技術協力委員会、学術・出版委員会、教育委員会の6つである。
(参考資料)
・中国工程院HP http://www.cae.cn/
16. 中国気象局
中国気象局(中国气象局)は、国務院直属事業単位の1つであり、主として中国全国の気象業務を担当しており、日本の気象庁に相当する。新中国発足時には人民解放軍の気象局として設置されたが、1953年に政務院に移管され中央気象局となった。1982年に中国気象局となり、さらに1997年に現在の直属事業単位となっている。
業務の性格上、観測を行うための支部を省、自治区、直轄市などに設置している。
(参考資料)
・中国気象局HP http://www.cma.gov.cn/
17. 国家市場監督管理総局
国家市場監督管理総局(国家市场监督管理总局)は、国務院の直属機構として2019年3月に設置された新しい役所である。中国政府の構造改革の一環で、会社の設立や商標の登録などを司っていた国家工商行政管理総局の業務や商務部などにあった独禁法関連の業務などに併せて、食品と医薬品の安全性管理を行う国家食品薬品監督管理総局の機能を国家市場監督管理総局へ移管している。
科学技術に関係する業務としては、食品と医薬品の安全性管理があるが、このうち食品の安全業務はこの総局で直接実施しており、医薬品の安全業務については国家薬品監督管理局で実施している。食品の安全業務は、中国国民にとっても関心の高い事項であることもあり、国務院内の諮問機関として食品安全委員会が設置されており、同総局が事務局を担っている。
18. 国家エネルギー局
国家エネルギー局(国家能源局)国務院にある「部委員会が管理する部局」の一つであり、独立した組織であるものの国家発展・改革委員会の管理下にある。エネルギー行政を所管しており、日本の資源エネルギー庁の一部に当たる。
科学技術的には、新エネルギーや省エネルギーなどに係わる政策を担当している。
(参考資料)
・国家能源局HP http://www.nea.gov.cn/
19. 国家国防科技工業局
国家国防科技工業局(State Administration of Science, Technology and Industry for National Defense:SASTIND)は、国務院にある「部委員会が管理する部局」の一つであり、独立した組織であるものの工業・情報化部の管理下にある。歴史は古く、1952年に設置された人民解放軍国防科学技術委員会が母体となり、数度の改編を経て現在に至っている。
国家国防科技工業局は、原子力、航空、宇宙、通常兵器、船舶、電子などの国防先端技術産業を所管する部局であり、「中国航天科技集団有限公司」、「中国航天科工集団有限公司」のほか、「中国航空工業集団有限公司」、「中国船舶重工集団有限公司」、「中国核工業集団有限公司」、「中国兵器工業集団有限公司」、「中国電子子科技集団有限公司」などの巨大な国営企業を傘下に有している。
国家国防科技工業局は、宇宙と原子力の開発で主導的な地位にあり、これらの中国の対外窓口である国家航天局と国家原子能機構を実質的に監督している。
国家航天局(China National Space Administration:NSA)は、中国の宇宙活動全般を統括し、中国を代表して外国や国際機関との協力・調整を行う機関である。数年ごとに作成される中国の宇宙白書を刊行している組織である。1993年に航空航天工業部が改編され、その一部が独立して国家航天局となった。発足当初は国家国防科技工業局と同様の「部委員会が管理する部局」であり、工業・情報化部の監督を受けつつも独立した部局であったが、現在は工業・情報化部の完全な傘下組織となっている。ただし、トップが国家国防科技工業局のトップが兼務しており、同局の所在地も国家国防科技工業局と同じであることから、実態は国家国防科技工業局の内部組織に近いと考えられる。国際的な面については、現在も国家航天局が中国を代表している。
なお、月探査計画を所管する「探月・航天工程センター」は、従来国家国防科技工業局の傘下組織であったが、近年この国家航天局の傘下組織となった。
一方、国家原子能機構(China Atomic Energy Authority:CAEA)は、中国の原子力開発全般を統括し、中国を代表して外国や国際機関との協力・調整を行う国務院の機関である。元々原子力開発全般は、国務院の第二機械工業部の担当であったが、1982年に核工業部と名称が変更となり、さらに1988年に原子力開発政策の担当が新たに設置された能源部に移管され、開発実施部門を中心としたそれ以外の業務は核工業総公司となった。能源部もその後機構改革になり、「部委員会が管理する部局」でエネルギー政策全般を所管する「国家エネルギー局」と原子力政策を中心とした「国家原子能機構」に分かれた。その後、「国家原子能機構」は、工業・情報化部の一部局となっている。ただし、そのトップは国家国防科技工業局のトップが兼務しており、同局の所在地も国家国防科技工業局と同じであることから、実態は国家国防科技工業局の内部組織に近いと考えられる。国際的な面については、現在も国家原子能機構が中国を代表している。
(参考資料)
・中央人民政府HP 『国家国防科技工业局』
http://www.gov.cn/fuwu/bumendifangdating/bumendating/guofangkegongju/index.html
・国家航天局HP
http://www.cnsa.gov.cn/
20. 国家林業・草原局
国家林業・草原局(国家林业和草原局)は国務院にある独立した機関であるが、他の部や委員会の監督を受ける機関の一つであり、自然資源部の監督を受ける。国家林業・草原局は林業に係る業務を所管する部局であり、日本の林野庁に相当する。
林業に係わる研究開発を所管しており、傘下に中国林業科学研究院を所管している。
(参考資料)
・国家林業・草原局HP
http://www.forestry.gov.cn/
21. 国家中医薬管理局
国家中医薬管理局(国家中医药管理局)は国務院にある独立した機関であるが、他の部や委員会の監督を受ける機関の一つであり、国家衛生健康委員会の監督を受ける。
同局の具体的な任務は、中国医学や漢方薬の発展のための政策の策定、中国医学による治療・予防・健康管理・リハビリテーション・臨床治療の管理、中国医学と西洋医学の統合の調整、中国医学や漢方薬の科学的な解明などである。傘下に中国中医科学院を所管している。
(参考資料)
・国家中医薬管理局HP
http://www.satcm.gov.cn/
・中国中医科学院HP
https://www.cacms.ac.cn/
22. 国家薬品監督管理局
国家薬品監督管理局(国家药品监督管理局)は国務院にある独立した機関であるが、他の部や委員会の監督を受ける機関の一つであり、国家市場監督管理総局の監督を受ける。元々は「国家食品薬品監督管理総局」で、食品の安全性と医薬品の安全性の両方の業務を実施していたが、2019年の行政改革でこれらの業務が国家市場監督管理総局に移行し、そのうちでも医薬品については国家薬品監督管理局として半ば独立した組織となった。主要業務は、漢方薬を含む薬品、医療機器、化粧品などの安全確認である。薬剤師の管理登録も行っている。
(参考資料)
・国家薬品監督管理局HP https://www.nmpa.gov.cn/
23. 国家知識産権局
国家知識産権局(国家知识产权局)は、国務院にある独立した機関であるが他の部や委員会の監督を受ける機関の一つであり、国家市場監督管理総局の監督を受ける。
1980年に中華人民共和国専利局として設立され(「専利」は中国語で「特許」を意味する)、1998年4月1日に機構拡充されたうえで現名称に改称された。
(参考資料)
・国家知識産権局HP https://www.cnipa.gov.cn/